11月27日(土)
アルナルドゥル・アルナルソン、ゾーラン・デュキッチによるデュオコンサートが、
ルティエールの楽器店内にて行われました。
アルナルドゥルはルティエールで、ゾーランはESMUC(カタルーニャ上級音楽学校)で、
それぞれギター課の教授として教鞭をとっています。
この小さなスペースに7,80人の聴衆が集まり、開演前から熱気に包まれました。
プログラムは全てM・リョベートの編曲による2重奏のための作品で、
メンデルスゾーン、モーツァルト、チャイコフスキー、チャバリなどの小品、
そして数曲のアルベニスやグラナドスを、この楽器店がコレクションする、
20世紀初頭に製作された2台のギターを使用して演奏されましたが、実に質の高いアンサンブルでした。
アルナルドゥルの若干デリケートな音質と、ゾーランの太く密度の濃い音色との対比も効果を出しており、
様々な音域で朗々と歌われる旋律や、あちこちに散りばめられた美しいハーモニクス、
ゾーランの巧みなピッチカートや特殊奏法など、自由で多彩な音楽を聴かせてくれました。
そもそもリョベートがこれらの編曲を行った動機というのは、
弟子であったアルゼンチンの女流ギタリスト、マリア・ルイサ・アニードとのデュオ活動のためからだと思われますが、
そういった生活に結びついた仕事だけに、アイデアに溢れた、有機的で温かみを感じさせる名編曲だと思います。
何か古い時代の1シーンを思わせるような趣深いコンサートでした。


11月22日(月)
E・ヒメーノのソプラノと、R・エストラーダのピアノによるコンサートを聴きました。
プログラムは全てスペインの歌曲でしたが、
G・モランテ、F・ペドレル、E・モレーラ、F・モンポウ、X・トゥルル、E、トルドラなど、
アリカンテ出身のO・エスプラを除いては、カタルーニャ出身の作曲家によるものでした。
そのため、一般に想像されるスペイン音楽ではない、
カタルーニャ独特の繊細でナイーブな芸術的気質に満ち溢れていました。
この地方の民謡を扱ったペドレルの作品は、
古い素材の中に近代の色合いが加わった大変美しいもので、
またモンポウの作品は透明な和音とエモーショナルなメロディラインが印象的で、
それらが静かにクライマックスを導く、繊細で緻密な構成の佳品。
最後に演奏されたトルドラの2曲は、暗く重いもの、
そして意表をつき、南スペインのリズムを使用した快活なものとのコントラストが面白く大変盛り上がりました。
こういったプログラミングは僕にとっては珍しくて興味深く、
カタルーニャのいくつかの時代の芸術背景を垣間見ることができたようでした。


11月14日(日)
バルセロネータ、シウタデラ公園、ディアゴナル・マル公園など、
海岸沿いの一画へ遊びに出かけた際、いつも地中海をカメラに収めてきます。
僕は今まで、特に海が好きだと思ってきたわけではなかったのですが、
バルセロナは海に面していることもあり目にする機会が多く、
なぜかだんだん地中海を眺めることが好きだと感じるようになりました。
今までに撮ったいくつかの写真をPHOTO欄Landscape12にアップしてみました。
よろしければ是非ご覧下さい。


11月8日(月)
ルティエールでフェルナンドのレッスンを受講し、幻想曲OP、7(ソル)を演奏しました。
この曲を選んだのは、せっかくバルセロナにいるのだし、
バルセロナに生まれ育ち、そして学んだF、ソルの大曲をやってみたいという気持ちと、
また、オーケストラ的に色彩豊かなこの作品は、フェルナンドの音楽性にピッタリだと考えたからです。
実際、これほど面白いレッスンはかつてなかった、というほどに興味深いものでした。
作品が求めるニュアンスを極めて立体的に捉え、それに伴った様々な表現方法をアドバイスして頂きましたが、
特に音色の変化という点では大変有益なものでした。
柔らかい音から硬い音にいたるまでのレベルが実にきめ細かく、そのための右手の使い方は大変微妙です。
普通では悪い動きだと言われそうなものまで、彼は音の微妙な変化という点を考えて使うことさえあります。
ヴィブラートにしても彼の感性にかかれば無限のニュアンスがあり、それを様々な場面で使い分けます。
これほど繊細で緻密な音楽性は稀に見るものですが、
ちょうど僕にとってもこうした音楽を学ぶ必要があると思っていたし、
またそう感じることのできる時期にタイミングよくいい先生にめぐり会うことができたと思います。


11月2日(火)
バルセロナ在住の作曲家、ダビッド・パドロス氏に作曲のレッスンを受けました。
ダビッドはスペインをはじめ、ドイツ、スイスなどのコンセルバトリオで学び、
その作品は広くヨーロッパで演奏されているスペインの現代作曲家です。
レッスンでは、前日にこなした対位法課題や和声課題などを用意していきましたがそれらには触れずに、
僕が過去に書いた作品の楽譜を丹念に読み解き、それについてのアドバイスに終始しました。
音楽レッスンの中でも作曲というのはとりわけ難しく、とりとめのない部類に入ると思いますが、
特に初めは教える側にとって、生徒のレベルやスタイルなどを知る必要があり、
そのため全体的には、いくつかの質問などを交えながらの様子見といった印象でした。
次回からは、20世紀や現代の作品などを分析しながら勉強していきましょうとのことでしたが、
どんな風に学んでいくことができるのか非常に楽しみです。

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