6月30日(水)
友人と共に、まだ訪れたことのないバルセロナの観光名所をいくつか回りました。
サグラダファミリア聖堂は外観は何度も見ていましたが、今回初めて中に入りました。
この聖堂全体でキリストの生涯を象徴する構想とのことですが、
完成までにあと100年以上かかると言われています。
中にはたくさんの観光客がいましたが全体的に工事が行われ、
いかにも建設途中であることを感じさせられました。
その広い敷地や高く聳え立つ白い柱、美しく大きなステンドグラスなど、
完成すれば今までにない巨大な教会になるだろうといった印象を受けます。
エレベーターで上った地上50メートルから見渡すバルセロナの街はまさに絶景。
とても豊かで壮大な気分になりました。
下りは鐘楼内部の螺旋階段しかなかったのですが、下れど下れど際限なく、
地上に着いたときには脚が棒のようでした。
続いて、ピカソ以後のスペインを代表する芸術家、アントン・タピエス美術館に行きました。
作品はどれも前衛的で、それゆえに作品なのか作品でないのか分からない作品も多数ありました。
なぐり書きのような模様や、絵の具ではなく土で書いた絵、
膨大な金属を使った意味不明なモニュメントなど、とにかくどの作品も難解なものでした。
その後ガウディ作のカサミラへ行き、こちらも今回初めて中に入りました。
このHPにも写真をアップしていましたが、見ての通り、徹底的に直線が排除されています。
外観だけではなく中の様子も、とても集合住宅とは思えない斬新かつ不思議な空間が広がり、
屋上はマスクをした人の形のような煙突が並ぶというさらにユニークな空間でした。
20世紀初頭の貴族達の生活を思わせるような、
このマンションの中で一番値段が張るだろうと思われるフロアーが公開されていましたが、
優雅なダイニングルームや応接間、美しいシャンデリアや大理石仕様のバスルームなどものすごい物件で、
一度でいいからこんなところで豪華な生活をしてみたい、、、という気分にさせられました。


6月 25日(金)
ルティエールで今年度最後のリカルドのレッスンがありました。
9月まで長い夏休みに入るため、こちらにいる留学生などは
ほとんど自国に帰国するようで若干寂しい気もしています。
僕自身は時間がとれそうなので、観光や講習会など有意義に過ごしたいと思っています。


6月23日(水)
こちらで知り合った日本人の友人達と共にサン・ホアンという火祭りに出かけました。
舞台となったバルセロネータの広場は大勢の人だかりで、一定のリズムを刻む太鼓の爆音の中、
悪魔に扮した集団が火の粉を撒き散らすたいまつを振り回し、
いたるところで鳴り続けるその爆発音はものすごいものでした。
どうやら火と爆発はセットになっているらしく、決してそれぞれ単独では存在しません。
特に最前列は火の粉が降り掛かるという大変スリリングなお祭りですが、
やはりそういった危険を省みないところがスペインです。
その後みんなぞろぞろと海岸へ向かい、朝まで打ち上げ花火が続けられました。(さすがに途中で帰りましたが。)
PHOTO欄Landscape5に写真をアップしましたので是非ご覧下さい。


6月 20日(日)
カタルーニャ美術館にてチリ人ギタリスト、ディエゴと共にジョイントコンサートを行いました。
この美術館の一角に設けられた広々としたフロアーに100人弱のお客さんが聴きに来て下さいましたが、
壁や天井の絵画はロマネスク様式といった感じの美しいもので、
とても落ち着いた雰囲気の中、演奏することができました。
プログラムは僕によるソロで 祈祷と踊り(ロドリーゴ)、
ディエゴによるソロで 無伴奏チェロ組曲第2番より(バッハ)、タンゴ・アン・スカイ(ディアンス)、
僕とディエゴによる2重奏で ミクロピエサス(ブローウェル)、アトム・ハーツ・クラブ・デュオ(吉松隆)。
ディエゴはかつてウルグアイで福田進一、エドゥアルド・フェルナンデスによるデュオコンサートを聴いており、
そのときに演奏されたこの吉松さんの作品がとても印象に残っているとのことで、
これを一緒に演奏しよう、という話になったのがそもそも僕たちが2重奏を始めたきっかけです。
この作品は技術的にはとても平易なもので、ブルースやロックの真似事も見られるのですが、
ある意味ではとても興味深いものがあります。
吉松さんがこういったスタイルをとるまでに様々な試行錯誤があったのだろうと感じさせられるのです。
各楽章の対比はとても上手くそれぞれが個性的で変化に富み、
今までのクラシック作品にはなかった柔軟性とジョークに溢れています。
コンサートの現場を考慮したものであると思うのですが、
実際プログラムの最後に演奏したこの作品はとてもウケが良く、大きな反響が返ってきました。


6月12日(土)
昨日に引き続き、バルセロナギターフェスティバルのコンサートが行われ、
新しい世代を代表するフラメンコギタリスト、トマティートがこのイベントのラストを飾りました。
会場となったオウディトリは2千人を収容する大変素晴らしいホール。
前半のプログラムはトマティートセクステットによりタラント、ブレリアス、タンゴス、ミネラ、ソレア、ルンバ。
CDなどでその演奏は知っていましたが、実際に聴いてみると想像を遥かに越えたものでした。
大変なヴィルトオーゾでフラメンコの魂に溢れ、まさにパッションが炸裂した音楽。
同世代のビセンテ・アミーゴがフラメンコの枠を越えた新しいサウンドなのに対し、
彼は伝統的なフラメンコをそのまま継承したようなスタイルで、
ゆえに洒落た雰囲気ではなく、心の底からわきあがる本来の姿のようなものを感じました。
後半はトマティートセクステットと、ファン・アルベルト・アマルゴスの指揮による
バルセロナシンフォニーオーケストラでソナンタ組曲が演奏されました。
トマティート自身の手によるこのフェスティバルのためのフラメンコギター協奏曲で、
指揮者のファンと、エンリク・パロマールなる人物がオーケストレーションを担当。
やはりダイナミックで表情に富み素晴らしく、
オーケストラパートも魂が乗り移ったように歯切れの良い演奏で彼をサポートしていました。
最後はスタンディングオーベーションの拍手大喝采で幕を閉じました。


6月11日(金)
バルセロナギターフェスティバルでのラリー・コリエル、バディ・アサド、
ジョン・アバークロンビーによるギタートリオのコンサートを聴きました。
ラリーとジョンは共にジャズフュージョンの世界で活躍してきたベテラン、
バディはブラジルのギターデュオ、アサド兄弟の妹で、ジャンルにとらわれない活動を展開しています。
プログラムはラリーによるオリジナルや即興演奏、
ジョビンなどラテンの作品を彼らなりに扱ったものなどでしたが、
ノリが良く自由で楽しい、素晴らしいコンサートでした。
ラリーはジョン・マクラフリンやパコ・デ・ルシアのスーパートリオに参加していたことがあり、
その80年代のライブビデオを持っていますが、ずいぶん年月が経ったのだという実感がします。
それでもテクニックは高く、機敏にハーモニックスを多用したり、
ラリー節といったフレーズは派手で聴き応え十分。
バディはギターのみならず、歌ったり笛を吹いたり打楽器に徹したり、
どこかの民族楽器らしき楽器を演奏したりと多才で、そのどれもが高いレベルにあることに驚きです。
音楽に入り込んでノリまくっている姿は、いかにもラテン女性。
ジョンはジョー・パスを思わせるようなオーソドックスで良く歌うスタイルで、
それぞれの個性がうまく絡み合い、質の高いアンサンブルでした。
音楽的にもそうですが舞台上での様子にしても、
当然クラシックとは異質なものですが、こういう他ジャンルから受ける刺激というのは大きいものがあります。


6月3、4日(木、金)
ルティエールでリカルドのレッスンが行われ、
パキート(タレガ)、グランドソナタ(パガニーニ)を受講し、他4名のレッスンも聴講しました。
いつも感じることですが、リカルドはどのようなスタイルの音楽にも幅広い知識があり、
またそれらが実に身に付いています。
楽譜に書かれている情報というのはほんの道しるべで、
奥にあるものを正しく読まなければ、正しくない表現になりますが、
そういった“どこにも書かれていないもの”に対してのアドバイスが優れていて、
やはりそれらは必要であり正しいものです。
実際には知らないことや、気付かないことというのは無限にあると思いますが、
そういったものを1つ1つ身に付けていかなければならないと感じます。

4日の午後、ルティエールの生徒と講師による、
チェロとピアノのデュオコンサートを聴きました。
プログラムはバッハ、ベートーヴェン、シューマン、カサドなど。
全体を通して力強く緻密なアンサンブルで快演。
最後のカサドはダイナミックな演奏で場内も盛り上がりました。
ルティエールは生徒のためにこのようなコンサートを定期的に行っていますが素晴らしいことです。

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