3月31日(水)
ルティエールでのリカルドのレッスンがあり、
M・de・ファリャの「ドビュッシー讃歌」、A・ホセの「ソナタ」を演奏しました。
どちらも質の高いアドバイスを頂きましたが、
ファリャはオーケストラバージョンからアイデアを得ての音色の使い分けは大変参考になりました。
そのために右手、左手共に考えもしなかったような使い方をするのですが、それらは貴重な発想です。
ホセは、ピアニスティックな音使いを意識し、
アクセントやフレージングを注意して演奏するようにとのことでした。
様々な作品から類似例を引用し各部分の音楽的な意味を示してくれましたが、
とても分かりやすく、理解が深まりました。
その後ヤン(ノルウェー)、アルバロ(メキシコ)、フェリックス(ボリビア)、
3名のレッスンも聴講しましたが、ポストグラードのコースの生徒は、
翌日に試験を控えて練習にも熱が入っている様子でした。


3月30日(火)
パコ・デ・ルシアの1993年のCD、「Live・in・America」を買いました。
とは言ってもこれは今までもう何百回(何千回は大袈裟かも知れません)も聞いてきたもので、
知人から借りて録音したMDを持っていたのです。
日本で見ていたときよりも、かなり安かったのもありますが、
あまりにも素晴らしいアルバムで、CDとして手もとに持っておきたい気持ちからでした。
ジャケットに写るパコはシブくてかっこいいし、全体に赤を使ったデザインも燃えるようでかっこいい。
僕にとっては最高のお気に入りで、
この演奏からは、細かい理屈を吹き飛ばした先にある“本物”を感じます。
こうして手に持つと、毎日聞いていた5,6年前の心境に戻りますが、これは宝物になりそうです。


3月26日(金)
バルセロナ在住のギタリストOさんのお宅へ遊びに行きましたが、夏に行われる、
ESMUC(カタルーニャ上級音楽学校)の試験についてなど、相談に乗って頂きました。
イギリス人が開発したアレキサンダーテクニック(体の機能を理解し、より効率的にするための技術)
というものがありますが、Oさんはそれを3年間学ばれたそうです。
僕自身も以前から興味を持っており、たびたび質問してみたり、
それにもとづいたアドバイスを受けたりしていたのですが、
自分にとってプラスになると感じるので、是非いい先生を見つけてレッスンを受けたいと思いました。
アレキサンダーテクニックについて書かれた本も貸して下さいましたが、
ギター演奏中だけではなく、私生活においても感じることのあった、
体の動きについての疑問を解決するきっかけになればと思います。


3月24日(水)
留学仲間のディエゴの部屋へ遊びに行きました。
彼とは2重奏を始める予定で、レパートリーの選択などを相談しながらパスタをご馳走してくれました。
その後は一緒にスペイン広場へ出かけ、インターネットのできる図書館や、
サルバドール・ダリの美術館などに行きました。
ダリの作品を見たのは初めてでしたが、どれも独創的で緻密。
あまりにも斬新で異常な世界に、正直なところ理解しかねる部分もありますが、
美術館の演出は美しく、じっくり堪能することができました。
以前ディエゴにはルティエールでのレッスン風景を撮ってもらったことがありましたが、
僕のデジタルカメラを気に入った様子。
スペイン広場を撮影してくれましたが、それをPHOTO欄Landscapeにアップしました。
どこかに僕が写り込んでいるかも知れません。


3月21日(日)
例によってサグラダファミリアを撮影し、
それをPHOTO欄に追加しましたので、よろしければご覧下さい。
今回はいくつかの角度から撮るため、周りを1周しました。
前回の画像は正面からのものですが、裏側の様子もアップしました



3月19日(金)
街を歩いていると、あれはロドリーゴではないか?と思わせる老人を見かけました。
バスを待っていたのでしょうか、奥さんらしき人と付き添っている姿は、大作曲家の生活を偲ばせました。
そういえば、以前もタクシーを使った際、運転手の後ろ姿が、
ホセ・ルイス・ゴンサレスに見えたこともありました。
ホセ・ルイスには過去にレッスンを受けたことがありましたが、話し方までそっくりでした。
その他にも、アルベニスのようなおじさんがいたり、
杖を突いて歩いている老人の姿がアンドレス・セゴビアのようだったり・・・。
彼ら巨匠達もこうして日常を送っていたスペイン人なのだ、と実感させられます。


3月16日(火)
あるソフトをパソコンにインストールしようとしたところ、
レジストリがおかしくなってしまい、インターネットもメールもできない、
いくつかのアプリケーションも全く起動しないという状態になってしまいました。
ホームページもこれで終わりか、と真っ青になりましたが、
さんざん考えたあげく、やるしかない!とWINDOWS98(古いパソコンです)の
再セットアップを実行したところ、何とか戻りました。
いくつかはおかしいままで、これから直していかなければなりませんが。
当たり前に出来ていたことが出来なくなるというのは辛いものがありますね。
そういったものへの感謝を常に忘れないように、と思いました。
もし、このHPがいつまでたっても更新されないという状況が起こった場合は、
パソコンお釈迦になっているかも知れません。(笑)


3月15日(月)
去年8月、初めてスペインへ来た時、
アパートが決まるまでの間しばらくホテル住まいだったのですが、
朝目覚めると、「ここは一体どこだ?」とわけが分からなくなることがありました。
すぐにスペインへ来たのだと分かるのですが、その一瞬は冷汗ものでした。
その部屋は窓の造りや模様、石造りの床など、スペイン的で異国情緒に溢れていて、
フランシスコ・タレガの「マリエータ」や「アデリータ」、「マズルカ・ト長調」などを演奏すれば、
まさに“そのまま”という印象でした。
とても質素で使いにくく何もない感じがして、
本当にこれからこんな国で生きていけるのだろうか?と、不安を感じましたが、
どこかギターの故郷に来たような気がしてうれしくなったものでした。
バルセロナの近代的な面をよく知ってしまった今となっては、
そのころに感じた、古めかしさを懐かしく思うのです。


3月12日(金)
バルセロナ在住ギタリストSさんのお宅に招かれ、友人とともにお伺いしました。
話もそこそこに通された部屋は、レストランのようなテーブル。
シャンパン、ワインなどと共にフルーツ、サラダ、スープ、ステーキなど本格的なフルコースにびっくりで、
シェフ顔負けのおいしい料理でした。
食事の後は、ジャズを聞きながらコニャックを頂きましたが、
様々な音楽家との交際や業界の裏話(?)、
またはご自身の半生などをお聞かせ下さり、楽しいひとときを過ごすことができました。
11日(木)に起きたマドリッドでの列車爆破テロにより、知人が被害に遭われたようで心を痛められていました。
人と人との諍いは本当に難しい問題で、まして国家レベルになるとそれは大変なものでしょう。
事情を知らない人間が反戦などを訴えても説得力のないことですし、実際どうにもならないかもしれませんが、
音楽は世界を変えることが出来ると信じたいものです。


3月10日(水)
昨日に引き続いてリカルドのレッスンが行われ、
僕を含めて4人がバッハ、トゥリーナ、ブリテン、レニャーニなどを演奏しました。
何度かレッスンを受け、また見学しているうちに分かってくることは、
リカルドの指摘するアドバイスは左手の使い方が個性的だということです。
押弦している指を頻繁に浮かせるように言うのです。
しかしやみくもに放すわけではなく、音楽の構造に適したアーティキュレーションに結びつけ、
それがすっきりさっぱりした表現につながり、また機敏な動きに役立っているのです。
そして細かいところまで各指が別々の動きを要求され(これは右手にも言えることですが)、
独立した3つや4つの声部がしっかり聞こえたり、オーケストラのようないくつかの楽器が聞こえたりするのです。
リカルドのテクニックは、指が早く回るというようなものだけではなく、
レベルの高い音楽表現に結びついたものです。


3月9日(火)
ルティエールでのリカルドのレッスンを見学に行きました。
ヤン(ノルウェー)とミレ(デンマーク)によるデュオでアルベニスのカスティーリャ、
トニー(スペイン)とディエゴ(チリ)は共にバッハを演奏しましたが、
3組とも内容の高いもので、リカルドによるアンサンブルのレッスンを見るのも初めてでした。
合わせる際の注意点や表現の面でアドバイスを受ける度に良くなっていくのが分かり、
メリハリの効いたさっぱりした演奏に変わっていきました。
トニーのレッスンはリカルドが2時間近く説明しつづけるというようなものでしたが、
考え方を根本から変えるという意味で意義深いものだったと思います。
アーティキュレーションの付け方や、スラーの位置は妥協せず最後まで統一しなければならないこと、
右手の各指の使い方や独立性を養う練習方など。
とりわけ興味深かったのは左手の訓練方で、
わざとポジション移動の大きい運指をつけ(普通に考えると滅茶苦茶な運指ですが)、
それを完璧なフレージングで弾けるようにするというものでした。
先日コンサートを聞いたディエゴのレッスンもバッハでしたが、
アドバイスにより、音のつながりや装飾法がよくなっていきました。
目の前で聞く、リカルドの機敏で鮮やかなバッハは本当に大きな感動です。
大変なヴィルトオーゾで聞く度に驚きを覚えます。


3月6日(土)
ルティエールで共に学んでいるチリ人ギタリスト、ディエゴのコンサートを聞きに行きました。
プログラムは無伴奏チェロ組曲第二番(バッハ)、序奏とカプリス(レゴンディ)、
3つの練習曲(セスペデス)、ソナタ(ブローウェル)など。
難曲揃いでしたが、確かなテクニックと線の太い美しい音で演奏。
特にバッハは骨格のしっかりした重厚な音楽で楽しむことができました。
3つの練習曲は知らない作品でしたが、あとで聞いたところによると知り合いの作曲家とのこと。
それぞれ和音、アルペジオ、スラーの練習を目的としたものでしたが、
ラテンのリズムのなかにコンテンポラリーな音使いが見られ、興味深く聞きくことができました。
終演後、ルティエールの生徒達でバルへ飲みに行きました。


3月3日(水)
こちらのCDショップには、ファリャ、トゥリーナ、モンポウ、グラナドス、ぺドレル、ロドリーゴなど、
スペインの作曲家のものがたくさんあります。
さすがに自国の音楽を大切にしているようで、日本では見ることのなかった作品を聞くことができます。
トゥリーナやロドリーゴのあらゆるオーケストラ作品をまとめて聞いたのは初めてですし、
モンポウやグラナドスの未知のピアノ曲を知っていくのも興味深い体験です。
これからどっぷりと、スペイン音楽に浸っていきたいと思います。


3月2日(火)
作曲家・ピアニストである加古隆さんのアルバム「シーン~映像音楽集」には、
NHKなどのテレビ番組や映画の為に創作されたものばかりが収められています。
その中の1,2曲目に、「大河の一滴」という曲があります。
約6分程の長さですが、たった1つの旋律ラインを3回繰り返しているだけで、
その間、楽器の組み合わせによって持たせているのです。
アランフェス協奏曲の第二楽章や、ピアソラのオブリビオンなど、飛び抜けた名旋律はたくさんありますが、
僕にとって「大河の一滴」は、それらを凌ぐほどのものです。
これほどに素晴らしい旋律はありません。
技術的には一見、ポピュラー音楽のような作り方ですが、
美しく完璧な対位法、見事なオーケストレーションは奥の深さを感じさせ、
この音楽からでしかないと感じることのできない儚さがあります。
誰の言葉だったか記憶にありませんが、
「私は自分にとって新鮮であると思えることをやる。
例えそれが、他人にとっては古臭いと感じることであっても、自分にとって新鮮であればそれでいい。」
という考え方に影響されたことがありました。
作曲家にとって、どのようなスタイルの作曲家になるかということは一番重要なことだと思います。
結局、理屈を越えることができるかということと、
本人にとって新鮮であると思えることが、本当に新鮮なものであるかどうかということでしょう。
加古さんはとても高い次元でそれを実行されていると思います。
「大河の一滴」。興味のある方は是非お聞き下さい。

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